絶対にこの記憶だけは
もう思い出したくないと封印した
トラウマのパンドラの箱
硬く蓋をしているのに
孤独や復讐心、さみしさの闇が
ときどき顔をのぞかせて
ぴょん吉は怯えている
⭐︎
慌ててぴょん吉は
パンドラの箱を捨てようとする
でも捨て方がわからない
大切にしていたぬいぐるみを捨てみる
思い出の写真を捨ててみる
日々を綴った日記を捨てる
夢を描いた文集を捨てて
昔から好きだった趣味も捨てみた
捨てれるものはすべて捨てた
そうやって
たぶん自分も捨てた
これだけ自分を捨てたのに
パンドラの箱が
無くなってくれない
薄々は気づいている
付きまとう孤独感は
あの箱を開けないと消えないのだと
⭐︎
そうしてあるとき
ずっと孤独でいるという恐怖が
パンドラの箱を開ける恐怖を上回って
ぴょん吉はおそるおそる
パンドラの箱を開ける
恐れで支配されそうな暗闇の中で
目を凝らすと
ぴょん吉は小さな光を見つけた
暗闇だと思っていた過去にも
まばゆい光はあったのだ
それもそのはず
ぴょん吉は今、生きている
暗闇が多かっただけで
そこには幸せな場面もあったのだ
記憶というやつは
嫌な部分だけ
封印することはできない
あの時期、とか
何歳の頃、とか
忘れたい記憶というのは
その周辺の出来事も引き連れて
封印してしまう
近づかないようにしていたときは
真っ暗だと思っていたのだけど
箱を開けて記憶の暗闇に
近づいてみると
ところどころが光っている
パンドラの箱を開けたら
忘れていた
あの頃の自分が好きだった
たくさんのモノや人達が出てきて
見失っていた
自分らしさも思い出した
ぴょん吉はちょっと
やみつきになって
トラウマの箱の中から
せっせと光を採掘している
暗闇から光を見つけて
出来るだけ明るい星空に
変えてやるんだ
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